【2015/12/8】顕微鏡実習
マヒドン大学熱帯医学短期研修はタイ、マヒドン大学のBangkok schoolで朝8時から始まりました。森医師(マヒドン大学の熱帯医学部の非常勤講師)がマヒドン大学の紹介、熱帯医学についての総論をプレゼンテーションしました。熱帯医学とは何か、また熱帯病の特徴について、実際のタイの地域の例を出しながら紹介しました。
午前中は消化管寄生虫症の診断に焦点をあてて、セミナーを開催しました。Dr.Dornによる消化管ぜん虫症、Dr. Aongartによる消化管原虫症の診断についての講義の後、顕微鏡で実際の消化管寄生虫のサンプル、Unknownサンプル(何に感染しているか分からないサンプル)を使い、顕微鏡診断について学びました。また臨床症状や治療についてもディスカッションを行いました。講義では、寄生虫の名前が英語で多く出てくることから消化不良の印象もありましたが、サンプルを多くみることで、診断のプロセスを肌で感じることができました。
午後はマラリアの診断についてのセミナーでした。Prof. Yaowalarkによるマラリアの総論、生活史、診断のプロセスを学んだ後、Thin smear, thick smear, 簡易テスト、染色の練習を実際のサンプルを使って行いました。またそれぞれのマラリアの顕微鏡の特徴をステージ別に顕微鏡で見ることで、鑑別のプロセスを学びました。Unknownサンプルを使用して、マラリアの種の同定方法について学びました。マラリアの種の同定方法については講義だけでは覚えられない部分もありましたが、顕微鏡で多くサンプルを見ることで整理できました。
17時から日本語で振り返りとディスカッションを行いました。マヒドン大学DTMH,MCTMの卒業生の羽田野医師と非常勤講師の森医師を中心に熱帯医学の診断、治療、タイの保健制度、医学水準、地域医療について活発にディスカッションを行いました。タイの地域住民の病気に対する認識、政府の取り組み、医学教育についても質問があり、皆でディスカッションしました。
夜は大学の近くのレストランで懇親会を行いました。多くの方の参加があり、参加者同士でリラックスしながら交流を行いました。
【2015/12/9】ハンセン病病院および施設訪問 講義/テング熱
午前中はハンセン病病院および施設(Rajprachasamasai institute)を訪問しました。マヒドン大学熱帯医学部から車で30分程度の距離にあります。大学の小型のバン3台で移動しました。道に迷ってしまい待ち合わせに遅れる人がでるハプニングがありましたが、何とか到着します。まず病棟の回診から始まります。診断のプロセス、カルテの書き方、耳からのスメアの仕方、顕微鏡所見を学びます。タイでもハンセン病の症例は減ってきています。新規の症例2例について診察、ディスカッションをしました。既感染の拘縮後の患者さんの診察もしました。ハンセン病の典型的な皮診を見ることができました。その後レクチャーでハンセン病について、タイの疫学、歴史、治療方法についても学びます。タイではハンセン病施設は一般に開放されており、差別はほとんどなくなってきているようです。
午後からデング熱について学びます。Hospital for tropical diseasesではDr. Wirawanについてデング熱のケースについて診察およびディスカッションを行いました。その後Dr. Chukiatによるレクチャーがありました。発熱の特徴、血球減少、Atypical lymphocyte、ヘマトクリットの上昇、肝障害、肝腫大の出現時期、治療方法について細かく学びます。デング熱の皮疹の特徴、かゆみ等具体的な臨床所見についても学ぶことができました。
夕方からはタイ、ミャンマーの国境沿いでのNPO活動、余市での地域医療国際支援センターについてプレゼンを行いました。その後羽田野医師、森医師を中心に日本語で振り返り、ディスカッションを行いました。ハンセン病について日本とタイの違い、デング熱の蚊の駆除と保健制度等についての質問、コメントがあり、和やかな雰囲気でディスカッションを行いました。夜はシーフードレストランでタイ料理を堪能しました。
【2015/12/10】タイ伝統医療、マッサージ体験
オプショナルツアーとして、タイ伝統医療、マッサージを体験しました。ワットポーはタイ王室寺院で、バンコク最古の寺としても知られています。タイで初めての市民大学として伝統医療や歴史等様々な資料、記録を保存しています。朝、皆で待ち合わせてボートでワットポーに向かいます。天気も良く、川の風が心地良いです。今回、ワットポーで修業し講師の資格を持ち、チュラロンコーン大学のMPHを卒業した宮原さんに講師をお願いしました。ワットポーの歴史、タイ伝統医療の基本、タイハーブ、また自分でできるタイマッサージ、ストレッチ(ルーシーダットン)を学びました。
その後ワットポーの教室で希望者はマッサージを受けました。慣れない外国での研修の疲れがとれたようです。
【2015/12/11】Public Health Center (BMA21), Travel Medicine
最終日の午前中はProf. Srivichaによるマラリアの講義から始まりました。主に東南アジアのマラリアの特徴について、臨床面、公衆衛生面から講義を頂きました。受講者の理解を確認しながら、疫学、診断から治療まで広くマラリアを理解することができました。
午後はDr. WacharapongによるTravel medicineのレクチャー、ワークショップでした。Travel medicineの総論、Traveler’s diarrheaについて講義を受けた後、渡航前の外来診療、ワクチン等についてブース別に体験しました。夕方振り返り、来年の改善点等を参加者全体で話し合った後、終了となりました。 駆け足でしたが、4日間で熱帯医学、タイ伝統医学、タイの魅力を感じて頂けたら嬉しく思います。今後1年に1回熱帯医学研修を開催していきたいと思います。