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【2024/2/19】消化管寄生虫症 講義、ワークショップ

マヒドン大学熱帯医学短期研修(Onsite Short Course for Clinical and Laboratory Highlights in Tropical Medicine 2023)が始まりました。27名の参加者、多数のタイ人講師、スタッフ、日本からの実行委員会メンバーで開催しています。マヒドン大学熱帯医学部特にDepartment of Clinical Tropical Medicine, Department of Protozoologyがメインで開催しています。日本側の事務局はNPO法人グローカルメディカルサポートで行っています。日本側からは森医師、石岡医師、羽田野医師が参加しました。

医学部長Assoc Prof. Weerapongによるウェルカムスピーチにて会の幕が開きました。アイスブレイクはタイのワイの仕方、タイ語での挨拶の仕方を学びました。最初に森 博威医師がオリエンテーションを行いました。参加者を6グループに班分けを行い、4日間の研修を通して班別にディスカッションを行いました。
熱帯医学、寄生虫総論、消化管寄生虫症の鑑別の講義が始まりました。熱帯病は高温、多湿の環境だけでなく、トイレや水などの衛生状態、貧困、昆虫媒介感染症、人畜共通感染症と深い関わりがあること。感染症の背景を考えた総合的なアプローチが重要であることを伝えました。また蠕虫、原虫の寄生虫の顕微鏡の形態について学びました。
1日目の目標は熱帯医学領域で頻回に診る機会の多いマラリア、消化管寄生虫疾患のスメアを自分で作り、同定できることとしました。午前の顕微鏡ワークショップでは、Assoc Prof. Dorn, Assoc Prof. Aongartおよび寄生虫講座のスタッフの指導の元、顕微鏡スライドで消化管寄生虫症の顕鏡、診断について学びました。便のUnknown sampleが好評でした。生スメアを自分で作成して蠕虫、原虫を診断する過程で寄生虫疾患への理解や興味が深まったように感じています。
顕微鏡実習の合間に発熱患者さんの診察を行いました。脾腫を伴う発熱が続く患者について診察を行いました。現病歴は身体診察、検査所見を元に班ごとに議論を行い、木曜日にプレゼンテーションし、ディスカッションを行います。

昼はビュッフェ形式でランチを楽しみました。チキンのスープやシーフード、豚肉の炒めものを中心にタイ料理を楽しみました。

午後は森医師によるマラリアに関する講義からスタートしました。マラリアの生活史を理解し、各マラリア原虫について、Trophozoite, schizont, gametocyte等、各ステージの顕微鏡の特徴についてまず復習しました。顕微鏡実習、ワークショップでは, Assoc Prof. Porntip, Assoc Prof. Aongartの指導の元、Thick smear, Thin smear, 染色の実習、簡易キットの実習をワークショップ形式で学びました。また講義で学んだマラリアの診断について、豊富なサンプルを見ながら復習しました。最後にはUnknown sampleが配られ、皆でディスカッションを行いながらマラリアの同定を行いました。
夕方は1日の振り返りを日本人のAlumniで行いました。消化管寄生虫症、マラリアに関する診断、治療について多くの質問があり、ディスカッションを行い、理解を深めました。夜はランナム通りのタイ料理屋さんでWelcome dinnerを楽しみました。ビールを飲みながらイサーン料理を食べながら様々な情報交換を行いました。

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【2024/2/20】デング熱、メリオイドーシス、皮膚疾患

2日目の目標は東南アジアでの発熱疾患へのアプローチ、特に日本と違う点を学ぶこととしました。

次にタイで非常に診る機会の多いデング熱の講義と患者さんの診察を行いました。Dr.Weerapong, Dr.Wattana, Dr.Borimasからデング熱の基本的な診断、治療について講義を頂き、その後患者さんの診察を行いました。デング熱は解熱後に血漿漏出と出血傾向、臓器不全をきたすことがあり、警告症状に注意することが大切です。2症例の診察を行い、ディスカッションを行いました。症状、入院適応、検査所見、警告症状、治療のポイントを振り返りました。また血小板が低下し、食欲が低下している患者さんの診察からデング熱が重症化する際のタイムコースを学びました。参加者から多く質問があり活発なディスカッションを行いました。

午後はDr.Jittima, Dr.Supitchaから熱帯地方でのタイでの皮膚疾患の基本的な内容を症候から丁寧に講義頂きました。「皮膚科医の名探偵」という題目で、クイズ形式でディスカッションを行いました。特に熱帯病領域の皮膚疾患については特にPaederus dermatitis:ハネカクシによる皮膚炎やLarva migrans、疥癬、ダニ刺傷について学びました。講義後に顕微鏡でダニや真菌の特徴についても学びました。

Dr.Wironrong, Dr.Narissara、また日本から羽田野医師が参加しメリオイドーシスの講義、ディスカッションを行いました。メリオイドーシスはタイ、オーストラリアだけではなく世界的に問題になってきています。効果的な治療薬が少なくまた治療に時間がかかるため、臨床的には苦慮することが多い疾患です。Dr. Wirongrongはタイでのメリオイドーシスの第一人者です。豊富な経験を元に迷いがちな治療方針についてエビデンスに基づき丁寧に解説を頂きました。特にメリオイドーシスは抗菌薬を開始してからも発熱が続くことが多く、どのように対応するか(じっと我慢してのりきる)を学びました。またメリオイドーシスの鑑別として結核との鑑別の重要性を学びました。また遺伝子検査、疫学等最新の情報についても学びました。

振り返りではデング熱、メリオイドーシスを中心に振り返りました。様々な質問がでて活発に議論を行いました。

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【2024/2/21】ハンセン病病院訪問、発熱へのアプローチ、症例検討

午前中はハンセン病の専門病院Rat Pracha Samasai Instituteを訪問しました。歴史があるこの病院は、プミポン前国王が支援、訪問しています。ハンセン病の新規発生はタイでも減少していますが、新規患者さんを診察しています。ハンセン病患者の減少に伴い、外来は一般開放し、Occupational hospitalとして患者さんを受けいれています。引き続きミャンマーの労働者等外国人の受診が増えており、外国人も無料で治療しています。新規症例の診察を行い、患者さんの診断までの流れ、診断、検査のポイントを学びました。ハンセン病は長期に放置すると、神経、筋肉の萎縮から変形、拘縮をきたします。レクチャーでは菌量による皮疹の違い、skin slit test、皮膚生検、治療方法、副作用、らい反応、フォローの仕方についても学び、活発な議論を行いました。ハンセン病によるStigma、タイの歴史、また患者さんへの教育についても学びました。

午後はDr. Tanaya, Dr. Viranvarn, Dr. Wirongrongによる発熱へのアプローチ、症例のディスカッションを行いました。赤痢アメーバ、スポロトリコーシス、ブルセラ症、ヒストプラズマ、タロモミセスの症例提示があり、ディスカッションを通して東南アジアの発熱患者の診断に重要な要素(発症、局所の症状、鑑別の挙げ方、免疫不全のタイプへのアプローチ、人畜共通感染症の問診のポイント)について学びました。特にHIV等の免疫不全患者の発熱時の対応、また東南アジアに多い播種性真菌症の鑑別と特徴について学びました。

日本語での振り返りではハンセン病、また提示のあった発熱の症例について詳しく振り返りました。質問と活発な議論を行いました。

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【2024/2/22】病棟ラウンド、マラリア、トラベルメディシン、肺疾患

Dr.Prakaykaew, Dr.Udomsak, Dr.Viravarn, Dr.Tanayaの担当で、朝は病棟ラウンドから始まりました。フィラリアの症例と無鉤条虫の症例で、診断、治療について学びました。条虫に関しては、その他の条虫との鑑別、嚢虫症時の対応、また使用する薬剤の種類、特徴の違い(Nicolsamide,アルベンダゾール、プラジカンテル)について学びました。実際の寄生虫の頭部、体節の特徴を顕微鏡で見てどのように鑑別していくかプロセスを学びました。フィラリアの患者に関してはエコーをあてて、感染の特徴や治療について議論を行いました。

その後Dr.Polrat, Dr.Prakaykaew, Dr.Noppadon, Dr.Sant、また石岡医師が担当し、マラリアの診断、治療に関する講義、ディスカッションを行いました。初日に診察した症例は三日熱マラリアで、診断や鑑別疾患のポイント、また実際の顕微鏡をみてどのように診断をおこなうか症例を通して学びました。加えて、熱帯熱やその他の種別、重症マラリアの薬剤の使い方について学びました。マラリアの臨床的な特徴、診断、治療について症例ベースで学ぶことで理解が進みました。

午後はDr. PhimphanによるTravel medicineの総論的な講義から始まりました。Pre-travel, post-travelの対応に関する基本的な考え方、特にどこの国、どの地域で何の活動を行うかを丁寧に聞き取りを行い、ワクチンやマラリアの予防内服だけではなく、トラベルの関するリスクを減らしていく丁寧なアプローチからは多く学びました。現在マヒドン大学のTravel medicineでは3年間の公式のTraining courseを提供しており、多くの研修医が参加しています。講義の後は実際にTravel clinicに行き、Dr. Watcharapong, Dr. WasinからTravel clinicでの対応や具体例についてディスカッションを行いました。

最後はDr.Vipa, Dr.Supatによる呼吸器感染症の症例検討を行いました。結核の既往がある高齢男性の肺炎の症例および、COVID罹患後に回虫に感染している患者の好酸球性肺炎の症例を議論しました。2症例とも解釈が難しい症例で、議論の中から日本とタイの感染症やアプローチの違いについても学びました。

Closing ceremonyはDr. Chatponのご挨拶があり、修了書の授与にて幕を閉じました。

その後閉会まで振り返りを行いました。今回は事前のオンラインレクチャーで学んでいたため、知識がある方が多く、質の高いディスカッションが印象的でした。様々バックグラウンドを持つ医療者が参加しており、参加者間の交流も盛り上がりました。とても楽しく、充実した4日間になりました。ご参加ありがとうございました。

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